読書レビュー

『キネマの神様』原田マハ

2021年に映画化され、タイトルをご存知の方も多いのではないでしょうか?

KANAE

急逝された志村けんさんの代わりに沢田研二さんが代役を務めたことでも話題になりましたよね!

この記事では、この小説がどんな人に合うのかを最初にご紹介してから、
読後に心に残った3つのテーマについて、丁寧にお話ししていきます。

『キネマの神様』は、こんな人におすすめ!

  • 名画に興味があるけど「難しそう」と感じている人
  • 配信やSNS中心の生活に疲れて、心あたたまる世界に触れたい人
  • 「誰かと同じものを好き」と思えることに、幸せを感じられる人
  • 自分の親(特に父親)との関係に、少しモヤモヤがある人
  • 仕事をリタイアした親と、これからの時間をどう過ごそう?と考えている人
KANAE

原田マハさんが書かれた『本日はお日柄もよく』が好きだった人には特におすすめしたいです♪
『本日はお日柄もよく』では、次のスピーチが早く聴きたくなり、『キネマの神様』では、ブログの更新にワクワクします!!

あらすじ紹介

無職の娘とダメな父。ふたりに奇跡が舞い降りた!
39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、しかも多額の借金が発覚した。
ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることになった。〈ゴウ〉のハンドルネームで父が書くコラムは思いがけず好評を博し、借金とギャンブル依存から抜け出せそうになるが・・・。
〝映画の神様〟が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。

KANAE

私は「お父さんが映画ブログを始める」と言う部分が気になりました!

心に残ったテーマ

映画への愛と時代の移り変わり

名画と言われるものは、人によってはちょっとハードルが高くなるもの。
私も、「いつか観てみたい!」という気持ちはあるものの、「なんとなく難しそう・・・」と、思っていました。
『キネマの神様』は、作中にたくさんの名画の名前が散りばめられているのですが、その名画たちが、一体どんなものなんだろう?と自然と気になってきます。

名画と言っても何から見ればいいんだろう?そんなふうに思っていた人も、名画に触れてみるいいきっかけとなるかもしれません。
ざっと私の方で数えたところ、作中には25作品ほど映画のタイトルが出てきていましたので、気になったものを観てると、小説『キネマの神様』の楽しみ方も一段上がることでしょう!

KANAE

『ニュー・シネマ・パラダイス』を見てみようと思っています♪

また、名画座というと、30代の私にはあまり馴染みのないものですが、作中にDVDで映画を見る場面が出てきた時に、以前は自分たちにも当たり前だったものが、今となっては昔のものになっていることに気がついた時は衝撃を受けました。ここ数年で、一気に配信サービスが普及して、もはやそれが当たり前となっていますよね。
『キネマに神様』が出版されたのが2008年ですが、それを今読むことで、図らずも時代の流れを体験することができました。

昔ながらの映画館がどんどん減っていくのを寂しいと思う人たちがいるように、まさに「時代の移り変わり」を身に沁みて感じました。

KANAE

もっと若い世代になると、「DVDってなに・・・?」なんて思うんでしょうね(笑)

父との関係と、自分の気づき

主人公の歩が必死に父のギャンブル依存と向き合おうとする姿には、私自身も自分の父親についてもとても考えされられました

KANAE

私の父親は退職した後、「何か打ち込めるものがあるのかな?」と娘として、少し心配です。

私の父親は、少し前に長年勤めた会社を定年退職になり、今は再雇用で同じ職場に勤めています。「仕事人間」である父が数年後、完全に退職した後、どんなふうに生きていくのだろう。仕事にやりがいを見出していた人間が働かなくなる、役割を失うとどうなるのだろう、というリアルな問いが生まれました。

仕事を辞めると、単純に収入が少なくなるという問題もありますが、なによりも大きいのが、「社会とのつながりが失われること」であると思います。
誰かに必要とされている」と思えることは、生きる意味にも直結するわけで、作中で歩の父親が映画ブログを始めるというのは、まさに「社会とのつながり」として機能しているなと感じました。

家族から受け継ぐ“好き”という気持ち

主人公の歩は、ギャンブル好きの父親に振り回され、うんざりしながらも、なんだかんだで、父親のゴウとよく似ています。
「もうどうしようもない!」という状況になった時にはスパッと割り切ってしまえる性格や、趣味も映画で、関係する職業を選んでいたりと、父親の影響をしっかり受けているのです。
父親と娘という絶妙な距離感なのですが、この「影響」というのが、親子の「つながり」なんだなぁ、としみじみ感じました。

そういった「つながり」が、いろんな「奇跡」を引き起こしていく、家族の物語でした!

おわりに

『キネマの神様』を読んで、印象に残ったポイントについてお話ししました!

冒頭でご紹介した「こんな人におすすめ!」に当てはまっていそうな方はぜひ、読んでみて欲しいです♪
名画のガイドのような小説になっているので、その中から気になった映画を見てみると、新しい世界が開けるでしょう!

KANAE

「読んだことのある小説」という「つながり」があるので、難しそう!と思っていた名画も見やすくなりそう!

読後、心があったかくなっていること間違いなしです♪

ちなみに・・・

映画『キネマの神様』は、小説を題材にしながらもまったく違った内容となっているそうです!
そして、さらに、山田洋次監督オリジナルの脚本に感動した原田マハさんが、映画を原作として、『おかえりキネマの神様』という別の小説も書かれています!

これも、「キネマの神様」の奇跡かもしれませんね♪